熊本近代文学研究会次回例会のお知らせ

熊本近代文学研究会 会員各位

拝啓 時下ますますご清栄のことと存じます。
さて、熊本近代文学研究会 次回例会を下記のとおり
開催いたしますので、ご案内申し上げます。


    記
【日時】  10月20日(土) 午後3時より
【会場】  熊本大学文学部会議室
【発表者】 宮崎尚子 氏
【発表題目】川端康成たまゆら」論

発表要旨

 「たまゆら」は昭和26年5月に「別冊文藝春秋」に掲載された川端康成の短編小説である。従来から注目はされているものの、いまだに本格的な論考は出ていない。本発表ではこの作品を正面から捉え、主題の考察と、作品の位置づけを中心に論じていく。
 発表では、最初に小説中の装置として重要な位置を占める「曲玉」の考察から行う。「曲玉」は治子の形見であることから、彼女の生きた証であり、愛の証という役割を担っている。それは琅かん【ヘンは王・ツクリは干】の翡翠として具現化している。
 次に、治子の遺書のような短歌も、それぞれ出典を明らかにする。その結果、一つは生を、一つは死を「たまゆら」という詞を用いて表現していることが分かった。
 また、川端独特なのが「私」の視点である。治子の愛の表現である「たまゆら」は、恋人瀬田には伝わっていない。誰も気付かなければ、その美は世にも孤独な音で終わる。つまり美の発見者としての役割がこの「私」にはある。「たまゆら」とは本来の「玉響」だけでなく、「霊揺」という意味も付与されて良い。
 以上のような視点から、川端作品としての「たまゆら」を捉え直したい。
                         敬具
    9月 20日
             熊本近代文学研究会
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* 坂元です。会員の皆様におかれましては、ご多忙のことと存じます。
上記のとおり、次回例会を企画しておりますので、ご案内申し上げます。

* 前回例会は、道園達也氏による武田泰淳「審判」に関する研究発表が行われました。道園氏からは「審判」をめぐって新たな視点からの解釈が示され、それを受けて活発な質疑応答が行われました。武田泰淳の作家像に関する見直しにもつながるようなご発表を通して、充実した例会となりました。
 暑中の当日にご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
 
* 次回例会は、宮崎尚子氏による川端康成たまゆら」論の予定です。
川端研究を積み重ねてこられた宮崎氏による作品「たまゆら」の読み直し、興味深い報告が期待されます。当日はご参加いただけましたら幸いです。

* なお、本年の4月の年度計画では、9月の予定にありました宮崎氏のご発表を、年度計画時に内容未定だった10月例会として行うこととなりました。当初の例会日程が変更となりましたことについて、お詫び申し上げます。

*次回例会の開始時刻は午後3時となります。ご確認をお願いいたします。

* それでは、例会当日に皆様にお目にかかるのを楽しみにしております。
彼岸を迎えても暑さの残る毎日、会員の皆様、お体はどうぞご自愛ください。
                         (坂元)